NEWS

フッ素って効果あるの?安全なの?

 フッ素は自然界にも土壌や海水中に存在し、普通の水道水やお茶などにも微量元素として含まれています(日本の水道水はフッ素添加していませんが、水道水中にも微量に含まれています)(図1)。

フッ素って効果あるの?安全なの?

1.自然界に広く存在するフッ素

歯が生えてから間もない時期はむし歯になりやすいのですが、萌出後成熟といって自然界に存在するフッ素が歯に取り込まれて次第にむし歯になりにくくなっていきます。ですから子どものころに比べて成人になると頻回にむし歯治療に通うこと少なくなっていませんか?大人は歯周病や歯周病によって歯茎が下がったところの根面う蝕(歯の根っこむし歯)が多いのです。萌出後成熟を促進する目的で、海外では上水道のフッ化物添加がおこなわれたり(図2)、フッ素入り歯磨剤やフッ素洗口、歯科医院でのフッ素塗布が推奨されています。

フッ素って効果あるの?安全なの?

2.上水道にフッ素添加している国は60カ国以上

 フッ素には3つの作用があります。1つ目は歯質の強化、2つ目は再石灰化の促進、3つ目は細菌の酸産生の抑制です(図3)。

フッ素って効果あるの?安全なの?

3.フッ素の3つの効果。①歯質の強化、②再石灰化の促進、③細菌の酸産生の抑制(Lionのクリニカのホームページから引用)

 まずはじめに歯質強化について書きますね。よく「フッ素コーティングの有効期間はどのくらいですか?」と訊かれますが、フッ素樹脂でコーティングしている訳ではありません。少し専門的になりますが、歯のエナメル質はハイドロキシアパタイトCa10PO46OH2の結晶でできていますが、フッ素が取り込まれて水酸基(OH2がフッ素F2に置き換わること(フッ素化したアパタイト結晶あるいはフルオロアパタイトの結晶に変化すること)で酸に対しての抵抗性が高まります。

 また、フッ素は脱灰歯面の再石灰化(白濁した初期むし歯の修復)を促進してくれます。さすがに穴があいてしまったむし歯は治りませんが、白濁した歯面はフッ素により光沢が戻る可能性があります。

 さらにフッ素はプラーク(歯垢)中に取り込まれると、細菌の代謝系酵素を阻害して酸産生を抑制します。同時に細胞膜の透過性を高めて細胞外にフッ化物を出してプラーク中のフッ化物濃度を高め、細菌が糖を発酵させて酸を産生したときの脱灰を抑制するように働きます。

 フッ素のむし歯の抑制率は、フッ化物入り歯磨剤で3040%くらい、歯科医院での定期的なフッ素塗布で3040%くらい、フッ素洗口で5060%くらいです。むし歯の抑制率が意外と低いと感じられるかもしれませんが、仮にむし歯になっても重症度に違いがあります。

 フッ化物入り歯磨剤ではフッ素濃度は20173月までは950ppmまででしたが、現在は欧米並みの1450ppmに引き上げられました。ただし高濃度であればよいというものではありません。つばの吐き出しや口をゆすげない低年齢児では低濃度フッ素のものが推奨されています。概ね就学前の幼児は低濃度フッ素の歯磨剤、フッ素洗口法も適応は4歳以降とされています。歯磨剤の量も低年齢では米粒大で十分です。当院で扱いのある歯磨剤の資料ではありませんが、参考に示すと図4のようになります。

フッ素って効果あるの?安全なの?

4.年齢別の歯磨剤の量(Lionのホームページから引用)

 フッ素洗口はもっとも効果的な予防法です。フッ素濃度は250ppmでご家庭や園、学校などで洗口法はおこわれています。当院でもミラノールを販売しています。

 フッ素歯面塗布は、当院では歯ブラシ法で塗布しています。フッ素濃度は洗口法や歯磨剤に比べて高濃度の9000ppmです。小児への使用量は2ml以下(フッ素量で18mg)とされています。実際にはお子様の体重により異なりますので目安とお考えください。これは急性中毒(体重1kgあたり2mgのフッ素で急性中毒が起きます)を防止するためです。

 フッ素の過剰摂取は、慢性中毒(歯のフッ素症など)などの弊害がありますが、前述したように萌出後成熟を適正な使用で促進する目的であれば、何ら問題ないと考えられています。IQの低下やADHDの発生と関連付けて不安をあおる記載もネット上にはありますが、明確な因果関係を証明する報告はありません。放射線と同じく正しく怖がる必要があるのではないでしょうか?

詳しくは、厚生労働省のホームページeヘルスネットに掲載されていますのでご覧ください。

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-006.html

二子玉川ステーションビル矯正・歯科

小児歯科担当 高見澤 豊