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小児虐待と歯科について

コロナ禍で子どもも保護者も家にいることが多くなり、子どもと保護者の過度で濃密な関係が虐待の一因になるのでないかと危惧する声があります。児童相談所での児童虐待相談対応件数は記録を取り始めた平成2年度から増加の一途であり、令和2年度の児童虐待相談対応件数は205,044件で過去最高でした。

児童虐待相談対応件数内訳についてみてみると、心理的虐待が最も多く59.2%、次いで身体的虐待24.4%、ネグレクト15.3%、性的虐待1.1%と続きます。10年ほど前は身体的虐待が最も多く、次いでネグレクト、心理的虐待、性的虐待という順番でしたから、陰湿化しているといえるかもしれません。

被虐待児に認められる身体所見としては以下のようなものがあります。歯科的所見としては多数歯のう蝕、歯肉炎、口腔内裂傷、歯の外傷、歯の欠損などが挙げられています。

広島大学による広島県内の児童相談所での歯科健診結果(2011年)によると、被虐待児では未処置歯が非常に多く、う蝕があっても治療が受けられない場合や日常的に適切な口腔ケアが受けられない状況があると考えられました。

広島県内の児童相談所での 歯科健診結果(2011年)

私も以前勤務していた歯科医院で児童相談所に通告したことがありますが、子どもに歯痛がみられた時だけ来院し、継続的な治療を受けようとしなかったためネグレクトを疑い通告しました。

その家庭では、母親が精神疾患を患い、年長の子どもが下の子の世話をする環境で、家には歯ブラシもない状況でした。児童相談所の働きかけで受診をするようになり、治療を完了することができました。

二子玉川ステーションビル矯正・歯科

小児歯科担当 髙見澤 豊